朝日を巡る大騒動の根底で、今、日本の言論の世界に大きな地殻変動が起こっている。
これまで「言論」とは革新勢カの武器であり、「市民運動」とは、左翼が現実政治を動かすための行動だと考えられてきた。しかし、今般の朝日の謝罪をもたらしたのは、産経新聞や月刊誌「正論」に代表される保守勢力の「言論」と、在日特権を許さない市民のム太(在特会)に代表される右翼の「市民運動」だった(多くの人は気づいでいないが、在特会は旧来の政党や労働組合とは直接的な関わりを持たない点で市民運動である)。
この根源的な地殻変動は、朝日問題を取り扱った産経と朝日の紙面を読み比べるとより明らかになる。産経(九月十七日)に寄せられた、防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛氏の「正論」は非常に興味深い。〈日本のプレスはやはり多彩でなければならない。われわれは全体主義国家に住もうとは思わない。
複数主義的民主主義にとり、多様性は断念不能である〉と説き、〈朝日よ反省せよ。しっかりせい〉と結んでいる。要するに保守一色になってはいけないと保守側の人間が言っているのだ。まともな保守派の論客が、まともな見識を述べている。
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